外資系企業で働くことに対するデメリットやネガティブな反応としてよく挙げられるのが、「解雇されやすい」「長く働けない」「福利厚生が少ない」といった点です。ただし、これらについては誤解が混じっている部分も多く、一概にデメリットとは言い切れないケースもあります。
例えば「解雇されやすい」という点についても、実際には日本の労働関連法を守る必要があるのは外資系企業も同じです。そのため、外資だからといって必ずしも解雇されやすいとは限りません。
こうした一般的に語られがちなポイントとは別に、私が実際に感じてきた外資系企業で働くことのデメリットは、次の3点です。
- 海外勤務の可能性が低い
- 海外支社という立場上、ビジネスの決定権が限定的
- 国際的に飛び回って仕事をする機会が少ない
なぜこれらがデメリットになり得るのか、私なりの考えを説明します。
1.海外勤務のチャンスは意外と少ない
外資系で働きたい理由は人それぞれですが、「より高い年収を得たい」「自由な働き方をしたい」「英語を活かして国際的な仕事がしたい」といった理由を挙げる人は多いと思います。
英語を活かして国際的な環境で働きたいと考える中で、「海外で働きたい」「海外勤務をしたい」という動機から外資系企業への転職を検討する人もいると思います。しかし、正直なところ、それを主目的として外資系企業に入社した場合、チャンスは非常に限られます。
本社や海外支社へのInternal transfer(社内異動)、あるいはプロジェクト単位での一時的な滞在といったケースは確かに存在しますが、その数は決して多くありません。
社内公募はあるが、本社・海外支社への異動は狭き門
外資系企業では、社内でオープンポジションが出た場合、社外採用に先立って社内公募を行うルールを採用している会社もあります。海外のオープンポジションも閲覧できるため、空きがあれば応募自体は可能です。
ただし、日本人を特別に求めているケースなどを除けば、仮にオープンポジションがあったとしても競争は激しく、本社や海外支社への異動・転勤は狭き門と言えます。基本的に会社都合での海外転勤はなく、海外で勤務したい場合は、自ら社内のオープンポジションを見つけて応募し、応募先部署のHiring Managerなどと面接を受け、選考に通過する必要があります。
また、本社や海外支社が関わるプロジェクトにアサインされ、結果として現地勤務になる可能性もありますが、これも頻繁にある話ではありません。
英語は使えるが「海外で働く」わけではない
外資系企業の日本法人では、英語を使いながら外国籍の社員や海外オフィスのメンバーと日常的に仕事をすることはできますが、海外勤務という意味では、チャンスはかなり限定的だと考えた方が現実的です。
外資系企業への転職では、こうした期待と実際の働き方のズレによって、「思っていたのと違った」と感じてしまうケースもあります。下記の記事でも解説していますので、ご覧ください。

2.外資系企業の日本法人は「決定権のある組織」ではない
日本法人はあくまで一支社という立ち位置
海外勤務が少ない点とも関連しますが、外資系企業の日本法人は、あくまで「一支社」という位置づけであり、日本市場を担当することが主な役割です。
そのため、日本法人側から海外へ積極的に動くというよりは、本社の人間が日本市場の状況を確認するために出張してきたり、場合によっては赴任してきたりする関係性になります。
日本独自の判断が通りにくいグローバル体制
外資系企業では、本社が策定した事業戦略に従う必要があり、グローバル全体のビジネスオペレーションの一部として組み込まれています。そのため、ビジネス上の重要な意思決定については本社の承認が必要になるケースが多く、ビジネスのダイナミズムという点で物足りなさを感じる人もいるかもしれません。
また、本社とは別に、アジア太平洋地域(APAC)の統括拠点がシンガポールなどに置かれているケースも多く、「本社 → シンガポール → 日本」という意思決定の流れになることもあります。その結果、日本の実情と完全には合わない施策であっても進めなければならない場面も出てきます。
新規事業や市場開拓をしたい人には物足りないことも
そのため、自分自身で新規事業を立ち上げたい、新たな海外市場を切り拓きたいといった強い志向を持つ人にとっては、やや物足りない環境に感じられる可能性があります。
3.世界各地を行き来しながら仕事をする機会は多くない
海外で働きたいなら外資系より日系グローバル企業の方が現実的
海外赴任をしたい、世界中を飛び回って仕事がしたいという人にとっては、外資系企業よりも、日系企業の中でもグローバルに展開しているメーカーや商社の方が、チャンスは圧倒的に多いと言えます。
海外出張の頻度についても、海外マーケットを担当している日系企業の社員の方が多いケースは少なくありません。
これは、先ほど触れた外資系企業の本社の社員が海外支社へ出向くことが多いという話とも共通しています。
英語を活かして働くなら、どのキャリアを選ぶべきか
英語を活かして働きたいと考えたとき、どの環境を選ぶのかによって、実際の働き方やキャリアの広がり方は大きく変わります。
外資系グローバル企業の日本法人で働けば、日常業務の中で英語を使い、国際的な環境に身を置きながら仕事をすることは可能です。一方で、海外勤務や頻繁な海外出張といった働き方をイメージしている場合は、その期待との間にギャップが生じることもあります。
一方、日系グローバル企業で働き、海外市場や海外拠点を担当する道を選べば、海外赴任や海外出張といった機会に恵まれる可能性は高くなります。ただし、その分、日本語を中心とした業務や国内向けの調整業務が多くなるケースもあり、「英語を使う頻度」だけを基準に見ると必ずしも理想通りとは限りません。
どちらが正解という話ではなく、英語をどのように使いたいのか、将来的にどんな働き方を目指したいのかによって、選ぶべき環境は変わります。本記事が、自分に合った選択肢を考えるうえでのひとつの判断材料になれば幸いです。
まとめ:外資系企業で働くデメリットの整理
ここで挙げている3つの例は、いずれも外資系企業の「日本法人」で働くという立ち位置から生じるものです。そのため、これらは外資系企業全体に共通するデメリットというわけではありません。
実際、外資系企業の本社や海外支社へ直接転職するケースでは、今回触れているデメリットが必ずしも当てはまらない場合もあります。
日本法人はあくまで一つの地域拠点として日本市場を担当する役割を担っており、海外勤務の機会や意思決定への関与範囲が限定されやすいという構造的な特徴があります。こうした前提を理解したうえで外資系企業への転職を考えることが、入社後のミスマッチを防ぐうえでも重要になります。
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