2025年の夏、アメリカを中心とした海外の求職者トレンドには、これまでとはまったく違う動きが見られています。
求人に片っ端から応募する時代は終わり、今は応募前の過ごし方や戦略、さらには自分自身のストーリー設計までが注目されるように。そこには、AIの台頭や、価値観の多様化といった時代背景が大きく影響しています。
この記事では、今まさに起きている「海外求職者側の最新トレンド5選」をボリュームたっぷりに紹介します。どれも、日本でも数年内に波及しそうな動きばかりです。
なお、企業側の採用トレンドや柔軟なPTO制度など、「いま世界の人事で何が起きているか」をまとめた前回記事もあわせてどうぞ。
Ghost Job(ゴースト求人)の増加と応募疲れ
求人を見つけた!すぐ応募しよう!」 ……と思ったら、実はそれ、採用する気のない「飾り求人」かもしれません。
アメリカでは近年、ゴーストジョブ(Ghost Job)と呼ばれる実態のない求人が増加しており、応募しても何の返信も来なかったり、選考が動かなかったりするケースが多発しています。
ゴースト求人が生まれる背景:
- 採用計画が実際には凍結されているのに、求人だけは放置されている
- 常時求人を出しておくことで「企業の成長感」や「社外へのアピール」を保ちたい
- 応募者情報を収集する目的(採用予定がなくてもレジュメだけ欲しい)
これにより、求職者側は「応募疲れ」や「期待の落差」に悩まされるようになり、最近では応募前に以下のような自衛策を取る人が増えています:
- LinkedInなどでその求人の「実際の応募者数」や「過去の採用履歴」を調べる
- 会社のGlassdoor評価や社員の口コミをチェック
- 採用担当者とコンタクトを取り、「このポジションは実際に採用予定がありますか?」と確認する
もはや、求人=リアルなポジションとは限らないという前提で動くことが、海外では新常識となりつつあります。
AIキャリアツールで「自分の未来」を見つける
求職活動のスタート地点が「求人サイトを開くこと」ではなくなりつつある現在、代わって注目されているのがAIを活用したキャリア診断&職種提案ツールです。
例えば:
- Salesforceの「Career Connect」:スキル・経験・希望業種からおすすめキャリアをAIがマッチング
- LinkedInの「Next Role Explorer」:過去の職務経歴や他ユーザーとの比較から、思いもよらなかった職種を提案
- Googleの「Career Dreamer」(実験中):ユーザーの文章から「隠れスキル」を自動解析し、新しい職種アイデアを提示
これにより、
「営業やってたけど、実はデータ整理が得意という評価→カスタマーサクセスの適性あり」 「接客の経験が多い→リモート時代のバーチャルアシスタントに転職」 といった「気づかぬ強み」を活かしたキャリア提案が日常的に行われるようになっています。
日本でも今後、こうしたAIナビゲーション型のキャリア形成支援は伸びる可能性が高く、特に20〜30代の転職初心者にとっては新しい自己理解のきっかけになるかもしれません。
採用する側も進化しています。AIが面接官をサポートし、その面接官自身もAIに評価される時代がすでに始まっているようです。
▶ 詳しくはこちらの記事「Metaが描く未来のAI採用とは」をどうぞ。
Gen Xの再挑戦、AIでセルフブランディング
Z世代やミレニアル世代だけでなく、40〜50代(いわゆるGen X)世代の転職熱も高まっている2025年。
中には「20年ぶりに履歴書を書いた」「面接のやり方が変わりすぎていて戸惑った」という人も少なくありません。
そんな中で、彼らが頼っているのがAI。たとえば:
- ChatGPTで「自己PRを添削してもらう」
- 過去の経験をまとめて「キャリアストーリー化」してくれるプロンプトを使う
- キャリアコーチ系のYouTube/Podcastで“今風の言い回し”を吸収する
また、「見せ方」も重要で、昔ながらの時系列で事実を並べるレジュメではなく、
なぜそれを選んだのか? 何を学び、どう次につながったか? といった「自己理解→表現→共感」まで意識した“ナラティブ型レジュメ”が増えています。
経験がある世代ほど「伝え方」にひと工夫を求められる──というのが今の転職市場の現実かもしれません。
「応募は最後」が今の常識?求職戦略が逆転中
これまで「とりあえず10社くらい応募して、通ったところで考えよう」というスタイルが一般的だった求職活動。
ところが今、キャリアコーチの間ではこんな指導が主流になりつつあります:
「いきなり応募するのは最後でいい。まずは“土台作り”を徹底しよう」
その土台とは?
- キャリアの軸を明文化(=自分が大切にしたい価値観をはっきりさせる)
- 最新の職務経歴書・LinkedInプロフィールを仕上げる
- 興味ある企業の社員とネットワーキングを始める
- 企業文化との相性を観察(SNS・IR資料・経営陣の発言など)
これを済ませてから、本命企業へピンポイントで応募する。
「数撃ちゃ当たる」ではなく、「選んで勝負する」という戦略型の求職スタイルが広がっています。
特に欧米では、「応募する=自分を売り込む=1つの交渉の場」という意識が強く、準備不足での応募は「機会損失」と見なされかねません。
「Story of Self」──自分のストーリーで差をつける
LinkedInや海外のキャリアコーチが最近強調しているのが、「自分の物語を語れる人は強い」という点です。
スキルや経験は同じでも、それをどう語るかで印象はまったく変わります。
たとえば:
- 「5年間営業をしてきました」ではなく、
- 「失敗続きだった1年目、上司のある一言で視点が変わり、最終的にチームトップになった」
このような「学び」と「変化」のエピソードを語れる人材は、実務能力以上に「魅力ある人物」として記憶に残ります。
英語圏ではこれを「Story of Self(自分という人間の語り方)」と呼び、求職活動だけでなくキャリア全体で重要視されています。
面接でも、自己紹介が「年号の羅列」ではなく「価値観と行動がつながる一貫性あるストーリー」であることが好まれます。
この傾向は、個性や多様性を大切にするカルチャーと親和性があり、日本でも面接慣れした候補者との差別化ポイントとして広がる可能性があります。
まとめ|「応募前」の過ごし方が未来を変える
2025年の夏、海外の求職者たちはかつてないほど戦略的かつ創造的に職を探しています。
求人に応募する前に「自分は誰か?」「どこへ行きたいか?」「何が強みか?」をじっくり見つめ直す──
そんな「内側からの職探し」が、AIや新しいキャリアツールとともに主流になってきています。
今後もこうした海外の求職トレンドを紹介していきますので、ぜひブックマークしておいてくださいね!
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